研究内容
研究の位置づけ
当研究室では、材料の創成および改質技術を基盤として、産業界の抱える課題に向き合い、次世代のエネルギーデバイス実現の鍵となる材料、および地球環境に配慮した高分子材料・その合成技術の研究開発を進めています。そのための技術基盤として、ボトムアップ型のナノテクノロジーはもとより、有機・無機合成技術・高分子合成技術、セラミックス合成技術、超ハイブリッド材料(ナノコンポジット材料)創成技術を駆使し、ナノメートルレベルで構造を制御した高機能材料の開発を行っています。
具体的な研究テーマ例
全固体リチウムイオン電池用シリコン負極の開発
エレクトロニクススピニング法によるNMCファイバーの作製と全固体電池リチウムイオン電池二次電池への応用
ガーネット型固体電解質のイオン伝導性に及ぼす超急冷ガラスの添加効果
シート型全固体電池のバインダー利用に向けた硫化物系多量体電解質の開発
金属フリーの新規有機触媒によるポリ乳酸の精密合成
全固体リチウムイオン電池用シリコン負極の開発
高い出力特性と安全性を有する全固体リチウムイオン電池は、電気自動車向けバッテリー等への応用を目的に精力的な研究が進められています。理論比容量がグラファイトの10倍以上に達するシリコンは、その負極活物質として期待されていますが、リチウム化/脱リチウム化プロセスに伴う体積変化によりサイクル特性が著しく低下します。本研究では、多孔質シリコンナノ粒子の細孔構造を体積変化の緩衝領域として作用させることでこの課題を解決し、150サイクルで80%を超える容量維持率を達成しました。また、分散性の異なる複合負極のサイクル特性から、微細構造に起因する高安定性メカニズムを提案しました。
金属フリーの新規有機触媒によるポリ乳酸の精密合成
酵素リパーゼの触媒機構を再現した新しいタイプの酸塩基有機触媒を独自開発し、長さ、形を正確に制御した、生分解性高分子「精密ポリ乳酸」の合成に成功しました。分岐構造、末端構造等の一次構造を厳密に設計することで、これまでの市販ポリ乳酸とは全く異なる柔軟で強靭な性質を見出しました。
この精密合成技術を利用した全バイオマス新素材の開発に取り組み、企業との共同研究に繋げています。具体的には、長鎖多分岐化による高強度な生分解性接着剤、製紙分野で注目されているセルロースナノファイバーへのポリ乳酸の精密グラフト化、植物抽出物リグニンとポリ乳酸の複合化による木材由来プラスチック等の開発に成功しています。今後は、既存のプラスチック材料に置き換え得るバイオマス新素材の開発に取り組み、環境適合性と高信頼性を兼ね備えた高機能プラスチックへの展開を目指しています。